久しぶりの笑顔

2006年9月1日
夜遅く病院から帰ってきてから、1時間ほどして私たちは眠りについた。

午前4時45分に目が覚めるまで、救急外来で医者が来るのを待って

いたあの時の夢ばかり見ていた。

弟が出勤して行った後、母と私はひたすら眠った。

今までの寝不足と、夕べの緊張でくたくたになった体と心を癒す

意味でも、眠りは必要だった。

久しぶりに得た安堵だったかもしれない。

目が覚めても、また眠った。

起きると、きのう主治医から言われた言葉を反芻してしまう。

それは恐怖でもあり、苦痛でもあった。

現実から逃れたかった。

そして昼近く、父からの電話で起きた。

「夕べはありがとう。だいぶよくなったから、心配いらないよ。

きょうから個室に移るから」

「何号室?」

「○号室だよ」

電話を切った後、父が以前に言っていた言葉を思い出した。

「×号室に行ったら、もうお終いってことだよ」

×号室、それは一番ナースステーションに近い個室である。

確かに、重篤な患者さんが入っているようだ。

こういう時、なんでも悪く解釈してしまうものなのだろうか。

父もあぶないのだろうか、ザワザワと不安が足元から這い登ってきた。

母も私も、そのあと部屋の事には触れず、急いで支度をして見舞いに

行った。

恐る恐る病室に入ると、父は酸素吸入をしながら夕べから朝にかけて

あったことを喋り出した。

「きょう、失敗しちゃったよ」と父。

うちに何度も電話をかけても誰も出ず、それで時間をおいてかけたら

女の人が出たという。

それで、毎度のごとく「なんで、かけても出ないんだぁぁぁぁ!!

何十回もかけたんだぞ!何していたんだ!!!!!」(MAX怒)

そうしたら、「ごめんなさい、ごめんなさい。○○会館に行っていた

のよ」と相手は言ったそうだ。

ん?○○会館?そんなのに行っているはずがない。

そこで番号を言ってみると、「はい、番号はあっていますが△△では

ありません」と答えたという。

「あ、申し訳ありません、間違えました」と平身低頭謝ったらしい
が・・・・。

私「ほんとに、開口一番相手を怒鳴ったの?」

「うん、あとで気づいたんだよ、4桁めの数字を間違ったって」

あぁ、おとうさん、あなたって人は・・・。

どんな時も怒鳴るのね・・・。

それにしても、怒鳴られた女性も「ごめんなさい、ごめんなさい」と

謝ったなんて・・・。

ちょっと年配の声だったというから、父ぐらいの旦那さんがいる人

だったのだろうか。

申し訳ない。

父が笑って話したので、私も笑った。

笑いながら、あぁ、父は元気だ。怒鳴ったりするぐらいだから、そう
思った。

父の笑顔を見たのは何日ぶりだろう。

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